最近驚いたのが、長野県丸子実業高校のいじめ自殺事件です。
私は学生時代、いじめられる側にしばしば立たされました。だから、いじめ事件は気に掛かっていたのですが、この事件の不条理さは突出しています。
一昨年にいじめを苦に自殺者が出た事件なのですが、自殺した生徒の母親をいじめ殺した側が名誉毀損で訴えたというのです。
(「丸子実業高校生 いじめ 自殺事件」)
自殺はいじめが原因ではない、自殺した生徒の母親にあるというのです。母親が学校などを民事訴訟で訴えた仕返しのようですが、仮にも名誉毀損とまでいうのであれば、それなりの根拠は出して来そうなものです。
現時点で原告人側のサイトは発見できなかったので、上記のサイトなどに引用された訴状からの判断になりますが、原告人側にろくな根拠はありません。
『週刊金曜日』1月26日号「被害者遺族を訴えるのは奇襲サーブ≠ナはないか」(鎌田慧)が正しければ、県教育委員会の教学指導課、高校教育課、こども支援課、教育事務所、児童相談所、児童福祉司、警察署、福祉事務所、保健所それぞれの役員と民生委員、そして高木房雄校長が何とかこの母親を刑事事件で逮捕しようと画策していたとか(佐久署で刑法犯として逮捕するのは難しいといわれ、それは諦めたとか)。私は血の気が引きました。
仮にも人間を教育すべき官職の人間が、人を救うためには何一つ行動を起こさなかった。それを恥じ入るどころか、かえって遺族をさらに罪に陥れようとしていたとは。
「いじめられる方が悪い」と腐った説教する人間は山ほどいます。現在進行形でいじめながら、こういう説教を始めた説教強盗にも私は接したことがあります。
ですが、まだまだ人間の悪意(主観的には「善意」に化ける例がままあるのが恐ろしいですが!)を甘く見ていました。まさか被害者を罪に陥れ、それが出来ぬとなるとせめて金をむしり取ろうと公の行動に出た輩がいるとは!
高木校長曰く「物まねがいじめであれば、もう世の中じゅういろんな行為がですね、いじめってあれにされてしまうというのが、不満なんだよね」(発言の動画はzara氏の「丸子実業高校バレー部いじめ自殺事件」から見られます。またはYouTubeから直接検索も可能です)。こういう言い逃れは、いじめっ子の十八番。
だいたい悪口やからかいの十や二十を受けても、言われた側は我慢するものです。ことに、その源が身近な、不特定多数であった場合。つまり、言われた側が明らかに弱い立場である場合です。
鎌田氏によると、かすれ声をモノマネされていじめられていたという件について、バレー部保護者会は「Y(原文実名、以下同)君のモノマネだけではなく、他の者のモノマネも何人かしており、Y君本人もその時は笑って喜んでいたそうです」(前掲誌57頁)。
そんなわけねーだろ! 事を荒立てても潰されるのが目に見えていたから、やり過ごそうとしていただけです。良くて「空気読めないやつ」の烙印。最悪ならどんな陰惨な報復を受けたのか。町ぐるみ、いや県ぐるみで遺族をリンチしている現状を見れば、いやでも想像できます。そのような人間に囲まれたどんなにY君は恐ろしい思いをしていたか。どんなに心を傷つけられていたか。
おまけに、訴状では「いじめで話題になっている丸実だ」「バレーなんてやってていじめ問題はだいじょうぶなのか」などと言われたことを「精神的苦痛」の理由の一つに挙げています。ここにも彼らの小ずるさが表れていて、つまり放置しておけば彼らの悪事が全国的に広まるので、そうはさせじと「精神的苦痛」を主張して母親を脅迫しているのです。
ただし、たまたま丸子実業高校の人間が阿呆だからとか、田舎者だからこのような挙に出たのだという主張には同意しかねます。被害者を訴えた原告人には、バレー部の顧問をはじめ、部員ら約30人が名を連ねていると言います。
もし部員が原告人となることを断ればどんな仕打ちに遭うか。そういう組織の重圧がある環境だからこそ、こんなバカなことになっているのではないでしょうか。組織の有力者が、多数の立場が暴走すれば、どんな理不尽な行動も止まらなくなってしまう。この訴訟は、そういう人間の恐ろしさと弱点を示しているのではないでしょうか。
もっとも、母親を逆告訴するまで、母親に問題があるという主張もそれなりの支持があったようです。加害者側(と言っていいでしょう)があまりに調子に乗って逆告訴した結果、かえってバカぶりを天下に晒したということは可能です。丸子実業バレー部よりももっと巧妙に、秘密裏に被害者を泣き寝入りさせた「賢い」、しかし本質は同じ連中はどこにでもいるのです。それは、悪事の巧妙さを「賢い」と表現すればそう呼べるだけの話です。どちらにしても悪人たちです。
被害者遺族支援サイトの、公正な裁判を求める署名は「丸子実業高校生 いじめ 自殺事件について 公正な裁判を要請します」(PDF)です。出来れば協力してあげて下さい。お願いします。
管理人 K・MURASAME
2007/02/09 01:35